認知 症 貼り 薬。 【知っておきたい】認知症の治療方法、つづけ方のポイント|LIFULL介護(旧HOME'S介護)

リバスタッチパッチ・イクセロンパッチとは

認知 症 貼り 薬

アルツハイマーの薬を処方される際に、医師と薬剤師からご説明があったと思います。 それでもより詳しい情報をお知りになりたいのが真情でしょう。 「この薬を使うとどうなる?」「どのような目的で処方された?」「薬の量は適切?」「副作用は?」 ですのでこの記事では認知症専門医である長谷川嘉哉がアルツハイマー薬の効果や使い方について解説します。 実はこれは同業者である医師でも同様の疑問を抱いています。 私は、医師会等で医師の方々に講演をさせていただいています。 その際に、もっとも要望が多い内容が、「アルツハイマー薬の使い分けを知りたい」ということです。 現在、アルツハイマー薬は保険適応で4種類。 その他にも漢方薬等もあります。 専門医としては、それぞれ特徴があり、患者さんによって使いわけることで成果を出しています。 薬について「?」がある方はぜひ参考になさってください。 1.アルツハイマー薬の目的。 認知症の進行を止めるだけではない 外来で認知症の診断をしてアルツハイマー薬を処方しようとすると、ご家族から「認知症の薬は症状の進行を止めるだけなんですよね?」と質問されることがあります。 しかし、 アルツハイマー薬は神経細胞と神経細胞の流れを良くすることで症状の改善を図ります。 そのため神経細胞の数が維持されている時期、つまり 早期であれば早期であるほど改善する可能性が高いのです。 2.アクセル系とブレーキ系に分けて理解しよう アルツハイマー薬の作用は、アクセル系とブレーキ系に分けることができます。 2-1.アクセル系のアルツハイマー薬 患者さんが初診で訴えられた症状で、「やる気が出ない」、「物覚えが悪い」、「出来ていたことができなくなった」という症状の際、アクセル系の薬を最初に使います。 2-2.ブレーキ系のアルツハイマー薬 認知症のレベルが同じでも、攻撃的な症状が出る患者さんがいらっしゃいます。 例えば、「イライラする」、「性格変化で穏やかだった人が怒りっぽくなった」、「性格の先鋭化で気が強かった人がより気が強くなった」などです。 その時に、何も考えずにアクセル系のアルツハイマー薬を使用すると、火に油を注ぐようなものでさらに悪化します。 この場合は、ブレーキ系の薬を使います。 具体的には、保険薬の メマリーや 漢方の抑肝散、 抗精神病薬を少量使います。 3.アルツハイマー薬は使い分けが重要 薬を処方すると、「副作用はありませんか?」と聞かれることがあります。 しかし、薬とは両刃の剣です。 効果があって、副作用がない薬はありません。 副作用が全くないとは、全く効かないと同義語になります。 そのため、 薬の治療目的を理解して、適切に対処すれば、副作用をむやみに心配する必要はありません。 3-1.【アクセル系】アリセプトを漫然と処方する時代ではない アリセプト・ドライシロップ錠 出典: アリセプトは 最初にアルツハイマー薬として認可された薬です。 現在も最も処方されています。 副作用は消化器症状が強いため、一日1回3㎎で2週間慣らしてから通常量の5㎎で維持します。 合わない方は3㎎でも悪心により食事量まで減るほどです。 アリセプト投与後の脳の血流変化をみると、脳全体の血流がマイルドに上がっており特徴がありません。 私自身も 最初にアリセプトを処方することは少なく、他の薬が使えない場合にアリセプトを処方します。 講演等では、『漫然とアリセプトを処方する時代ではない』とお伝えしています。 飲み薬でなく、 貼り薬であり皮膚から吸収されます。 徐々に血中濃度が上がるので、アリセプトのような消化器症状は、かなり少なくなっています。 他のアクセル系の薬との違いは、薬理的にも、人間の感情を司る扁桃核を刺激し、言語を司る脳の部位の血流を増やします。 実際にご家族も、 患者さんに意欲がでて、言葉数が増えたと喜ばれます。 『何を食べても反応がなかったのに、薬を貼りはじめてから好き嫌いを言うようになったのよ』と文句を言いながらも、ご家族はどこか嬉しそうです。 このように効果的にはとても良い薬ですが、 皮膚症状が3割に出現します。 貼った部位が赤く腫れあがり掻痒感が出現しますので、同じアクセル系の薬であるアリセプトやレミニールに変更せざるを得なくなります。 3-3.【アクセル系】レミニールの一日2回服用は、服薬管理が大変 レミニール錠剤 出典: 効果的には、アリセプトとよく似ています。 特徴はなく、積極的に第一選択として使うことはあまりありません。 何よりも、 この薬の難点は、一日2回服用する必要があることです。 認知症では比較的初期の段階で、服薬管理ができなくなります。 そのため、一日2回の服用はハードルが高くなります。 介護者が対応するにも、やはり一日1回の方が負担は軽くなります。 昔、レミニールを販売するメーカーさんから、『先生、レミニールを日本で一番処方する先生になってください』と頼まれたことがあります。 それに対して、『そんなことをしたら、認知症患者さんの生活を理解していない専門医になってしまいます』と丁重にお断りしました。 3-4.【ブレーキ系】メマリーが介護負担を激減させる メマリー錠20mg 出典:第一三共株式会社 認知症の薬の中でもっと重要な薬です。 ブレーキ系のアルツハイマー薬としては抜群の効果です。 幻覚・妄想・易怒性で疲れ果てたご家族から、 『先生、本当に穏やかになりました。 』と感謝されたことは1,000例以上で経験しています。 実際に、 自宅での介護が不可能で施設入所が必要と思われるケースでも、メマリー投与で自宅介護が可能になることが多々あります。 当院でも、メマリーが発売される以前は年間に10例程度は精神科に紹介したものです。 メマリーが発売されてからは、精神科紹介件数は激減しています。 このデータは、海外の論文でも同様の効果が報告されています。 但し、やはり両刃の剣ですから 薬の量は注意が必要です。 メマリーは1回5㎎、10㎎、15㎎、20㎎と一週毎に量を増やします。 メーカは、20㎎まで増やすことを推奨していますが、私は処方開始2週間後に必ず受診をお願いしています。 つまり10㎎を服薬した段階でチェックします。 この段階で半数程度の方は穏やかになっています。 その場合は、量を増やすことなく10㎎で処方を継続します。 逆に10㎎でも効果がない場合は、20㎎まで増量することになります。 なお メマリーの副作用で多いものは、ふらつきです。 やはり服薬2週間後に確認します。 多少ふらつきを訴えられることもありますが、徐々に慣れていきます。 私の経験では、 ふらつきがひどくなって、メマリー投与を中止したケースはわずかです。 私は全国で講演をするため、地方でも認知症の専門医を紹介してくれと頼まれることがあります。 全国に知り合いに専門医がいるわけでは無いので、その場合は製薬メーカーに頼んで、メマリーをたくさん処方している医療機関を紹介します。 認知症を積極的に正しく診察していれば、必然的にメマリーの処方が増えるからです。 3-5.【ブレーキ系】抑肝散も軽視できない 抑肝酸 出典:ツムラ メマリーを使うほどでもないけど 少し穏やかになって欲しい、もしくはメマリーで効果はあるけどもう少し穏やかにしたい。 そんな時に効果があるのが 漢方の抑肝散です。 「漢方薬が効果あるの?」と思われるかもしれませんが、軽視できません。 服薬は粉の薬を一日2回から3回食事の前に服用します。 飲みにくいことが難点ですが、2週間ほどで効果が出てきます。 ご家族の方も「漢方薬って効くんですね!」と驚くほどです。 注意点としては 副作用として、低カリウム血症が2割程度で起こることです。 そのため、最低でも 2〜3か月に一度は定期的に採血をすることが必要です。 ちなみに精神科の先生は抑肝散を良く処方されますが、殆ど採血をされません。 低カリウム血症は、 筋力低下や筋肉痛、悪心、嘔吐、痙攣などの諸症状を引き起こしますので注意が必要です。 3-6.抗精神病薬を少量投与することも メマリーや抑肝散を使ってもどうしてもブレーキ効果がなく、幻覚・妄想・攻撃性が残る場合は、抗精神病薬を使用します。 具体的には、 リスパダール、 セロクエル、 エビリファイと言った薬です。 これらの薬の保険適応病名は、アルツハイマーでなく統合失調症です。 これらの薬をごく少量、0. 5錠から1錠程度を加えると、劇的に効果があります。 疲弊したご家族も、『こんな小さな薬を1錠飲むだけでこれだけ穏やかになるんですね』と驚かれます。 ただし、 あくまで保険適応外の使用になりますので、症状が落ち着いて、半年から1年たった時には、薬の減量・中止を考えます。 もちろん、減量・中止して悪化すれば、ふたたび元に戻します。 4.「アルツハイマー薬を止めたら良くなった」とは 時々、アルツハイマー薬を止めたらかえって良くなったという話を聞きます。 だから、 アルツハイマー薬なんて飲んでも効果がないと誤解される方もいらっしゃいます。 しかし決して素人判断で服薬を中止しないでください。 止めたら良くなったには、理由があります。 いくつか紹介します。 そんな時に、 間違えて使用したアクセル系の薬を中止すれば、いったん良くなったように見えます。 4-2.アリセプトの10㎎を使用して陽性症状が出現した場合 比較的若い患者さんにはできるだけの治療を行いたいものです。 アリセプトの5㎎で効果がなくなった場合も、積極的に10㎎まで増量します。 その時に 副作用として攻撃性といった陽性症状が出現した場合、薬を減量します。 そうすると薬を減らしたら良くなったように見えるのです。 4-3.メマリーの量が相対的に過剰になった場合 幻覚妄想といった症状は、年を取れば自然に改善します。 だからと言って、患者さんに年を取るまで待ってくださいとは言えません。 そこでメマリー等でコントロールします。 その後、加齢に伴い症状が軽くなれば、 メマリー等が相対的に過剰になります。 その時には、減量・中止します。 そうすると薬を減らしたら良くなったように見えるのです。 5.状態によってブレーキとアクセルの調整を 薬の特徴を知り、患者さんの状態に応じて適材適所で使うことが重要です アルツハイマー薬の治療は、それぞれの薬の特性を理解して、処方する必要があります。 いったん薬が決まれば、半年から一年は同じ薬で対応もできます。 そうするとご家族によっては、近所の専門外の医師への転院を希望されることがあります。 しかし、 できれば専門医の継続受診をお勧めします。 なぜならアルツハイマー薬は 定期的な微調整が必要だからです。 アクセル系とブレーキ系の薬を、症状に合わせて増減する必要があるのです。 少しブレーキが利きすぎているか? と思えば、アクセル系を増やしたりブレーキ系を減らします。 同様に、アクセル系が効きすぎている? と思えば、アクセル系を減らしたりブレーキ系を増やします。 専門外の先生は、処方された薬を継続することはできますが、調整することはできないのです。 6.まとめ 現在の薬に不安を覚えたら 本日、紹介した内容は医師向けに講演する内容とほぼ同じです。 そのため専門外の先生方によっては、この内容をまったく理解されていないこともあります。 可能なら、この記事を印刷して、主治医と相談をすることもお勧めです。 その時に、不機嫌になったり、拒否をするような医師であれば主治医変更も考えたいものです。 医師は常に新しい情報に貪欲であるべきです。 認知症の専門、非専門に関わらず患者さんが持ってきた情報を元に、一緒に考える姿勢が望まれるのです。

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リバスチグミン:イクセロン,リバスタッチ

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今回の「貼る」治療薬(経皮吸収型)は、ノバルティスファーマ(東京都)が「イクセロンパッチ」、大阪市の小野薬品工業が「リバスタッチパッチ」の製品名で売り出す。 薬効成分はいずれも「リバスチグミン」で、両社が共同開発し、2010年3月に厚労省に申請していた。 承認までに約1年かかり、アルツハイマー型認知症の治療薬としては国内で4例目となる。 ただ、同様の薬は、海外ではすでに81か国で承認されているので遅いくらいだった。 背中や腕、胸などに貼ることで、皮膚からアセチルコリン分解酵素阻害剤を徐々に吸収し、血液をめぐって脳内の記憶伝達物質の分解を防ぐという。 ノバルティスファーマは「禁煙に使うニコチンパッチと同じ要領なので、からだに貼るだけ」と説明する。 主に軽度と中等度の認知症患者を対象としている。 「物忘れ」引き起こす物質を減らす アルツハイマー型認知症の治療薬は2010年秋以降、急ピッチで承認が下りている。 中等度と高度の患者用として認められたのが第一三共製薬の「メマリー」。 軽度と中等度用としてはヤンセンファーマの「レミニール」があるが、いずれも経口薬だった。 それまで処方されていた薬は、エーザイの「アリセプト」だけ。 アルツハイマー型の症状である「物忘れ」を引き起こす原因は、記憶機能に関係ある「アセチルコリン」という物質が減少することにある。 その「アセチルコリン」を、薬の主成分である「塩酸ドネペジル」で、間接的に増やして進行を抑えようというのだ。 今回の「貼り薬」は「リバスチグミン」の成分によって同様の効能が期待されている。 経口薬に「貼り薬」が加わり、医師も処方の選択肢が広がることになる。

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根本的な治療薬はまだない 認知症を根本的に改善してくれる治療薬は、現代の医学の力をもってしても開発されていないのが現状です。 そのため、薬で症状の進行をゆるやかにする対症療法が行われています。 まず、認知症には大きく分けて 2つの症状があり、1つは物忘れが激しくなる「記憶障害」や場所や時間が分からなくなる「見当識障害」などを指す 「中核症状」です。 もう1つは、抑うつ・不安・怒りっぽさ・興奮・不眠など、心理面や行動面でその人特有の症状が現れる 「行動・心理症状(BPSD)」です。 これは前述の中核症状に付随して起こります。 根本的な治療薬がないことは前述しましたが、認知症の進行を穏やかにする薬や心理状態に併せた薬などはあり、実際の治療にも使われています。 中核症状の進行を緩やかにする薬と、「意欲を高める薬」「気持ちを静める薬」など行動・心理症状の状態に合わせて使う薬に分かれています。 残念ながら服薬によって急速に症状を改善させるのは難しいとされています。 しかし状態の悪化を食いとめることで、その人らしく生きられる時間を延ばすことができるのです。 健康食品に関しても、有効性があると確認できるものはまだ開発されていないのが現状です。 アルツハイマー型認知症の初期から中期にかけて、 進行を遅らせることができると言われるアリセプト。 塩酸ドネペジルという医療用医薬品で、認知症症状のひとつである記憶障害を緩和する効果も期待されています。 「アセチルコリン」という神経伝達物質の減少を防ぐ作用がある、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤のひとつです。 副作用として主に見られるのが「吐き気・嘔吐・食欲不振・下痢・興奮」などの症状です。 脳内のドーパミン量を増加する作用があるため、突然暴れだしたり妄想や幻覚を視たりする「せん妄」などが引き起こされる可能性も。 レビー小体型認知症では、薬物に対する過敏症状が見られる場合があるので、服用の際は少量から開始することが必要です。 また、不整脈など心臓疾患の持病がある方は服用できません。 イクセロンとリバスタッチパッチも、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤のひとつ。 リバスタッチパッチはリバスチグミンという医療用医薬品のことです。 「パッチ」という名がついている通り、 リバスタッチパッチとイクセロンは貼り薬です。 そのため、飲み込みがうまくできない患者さんも使用できます。 軽度および中程度のアルツハイマー型認知症に適応されます。 過去に、湿布薬を使用してかゆみや発疹が出たなどの経験がある場合は、医師に事前に相談しましょう。 また、ほかにも副作用として、胸の痛みや頭痛などさまざまな体調不良を訴えるケースが報告されています。 もしそのような症状が現れたら、速やかに医師に診てもらう必要があります。 脳には神経細胞を興奮させる「グルタミン酸」という神経伝達物質があります。 このグルタミン酸によって、脳内で神経に情報を伝えるNMDA受容体が過剰に活性化され、神経細胞や記憶に障害が現れるということも少なくありません。 認知症患者ではこのグルタミン酸が過剰になっていることが判っています。 「メマリー」は、メマンチンという医薬品名で、神経細胞の興奮死を防ぐためにグルタミン酸の働きを抑える効能を持つ薬です。 物盗られ妄想や興奮など、介護者の負担が大きい興奮型の症状が出ている人に処方されます。 認知症の薬には、「意欲を高めるタイプ」と「精神を落ち着かせるタイプ」の2種類がありますが、メマリーは後者の部類に入ります。 中度以上のアルツハイマー型認知症の方に処方されることが多いそうです。 BDSDに対する改善効果があるとされていますが、服用しすぎると精神が沈静化しすぎてしまい、活動量や意欲が極度に低下する恐れがあります。 場合によっては「日中も寝てばかり」といった事態も起きかねないので、過剰摂取をしないよう注意しなければなりません。 また、副作用によってめまいや便秘などが生じることもあるため、服用周期や量については、医師の処方を必ず守る必要があります。 血管性認知症や前頭側頭型認知症に使える薬 血管性認知症も前頭側頭型認知症も、残念ながら今のところ根治できる治療薬は開発されていません。 血管性認知症の場合は、脳細胞が死滅することで症状が進むため、 脳血管障害の治療薬である脳代謝改善薬や抗血小板薬などを服用し、次の脳梗塞や脳出血などが発症しないように対策をします。 また、 アルツハイマー型を合併している場合は「コリンエステラーゼ阻害薬」や「NMDA受容体阻害薬」を併用することで認知機能の改善を促します。 前頭側頭型認知症の場合は、行動障害の発症を抑えるために抗うつ薬の一種である「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」や「トラゾドン」などを投与することがあります。 薬を服用すると同時に生活環境を調整したり、短期入院したりして、問題行動の改善に取り組みます。 現時点での新薬の開発状況 これまでみてきたように、現現時点で認知症の治療薬は4種類あります。 しかし、 2011年にレミニールと、リバスタッチパッチが新たに加わって以来、新薬は開発されていません。 開発に至らない理由としてはさまざまな要因が挙げられますが、 大きな理由は「認知症の発症原因がいまだ明確ではない」ことです。 つまり、正体がわからない相手に効果的な手段を見つけるのは極めて難しいのです。 また、新薬を開発する際は通常、マウスなどの動物を使った実験が行われますが、ヒトの脳機能は高度であるため、動物をモデルにして再現するのは非常に困難です。 さらに、ヒトの脳内の変化をつぶさに観察するのが難しいことなども新薬の開発を妨げる原因になっています。 向精神薬 「向精神薬」とは人間の精神にかかわる神経機能に影響を与える薬の総称のことで、不眠症対策として使われる「睡眠薬」や、うつ病治療に用いられる「抗うつ薬」などが含まれます。 認知症の症状を抑え、進行を遅らせる薬も向精神薬の一種です。 認知症の症状には個人差があり、抑うつや意欲低下など心の活力が著しく低下することもあれば、暴言や暴力など過度に興奮する症状が現れることもあります。 特に興奮状態になりやすい場合、家族や介護者の負担が非常に大きくなり、夜も寝られないという事態に陥ることも少なくありません。 このような症状に対して向精神薬を用いることで、認知症の方が本来の自分らしい生活を取り戻すことができ、さらには家族や介護者の負担を減らすことにもつながります。 ただ、向精神薬の一種である抗精神病薬には、眠気やふらつきなど数多くの副作用があるので注意が必要です。 医師や薬剤師からどのような副作用が起こり得るのかの説明をきちんと聞き、不安な場合は、その危険性について細かく質問してみると良いでしょう。 認知症の症状緩和に役立つ、主な向精神薬は下記のとおりです。 対象となる行動 ・心理症状 薬品名 注意点 主な副作用 幻覚・妄想・焦燥・興奮・攻撃 リスペリドン ・高血糖あるいは糖尿病を合併している場合にも使用可能 パーキンソン症状 クエチアピン ・高血糖あるいは糖尿病では禁忌 ・レビー小体型認知症に対して使用を考慮しても良い 鎮静・眠気 オランザピン ・高血糖あるいは糖尿病では禁忌 ・レビー小体型認知症に対して使用を考慮しても良い 鎮静・眠気 アリピプラゾール ・高血糖あるいは糖尿病では慎重投与 鎮静・弱い眠気 抗うつ薬 「抑うつ」は、認知症の初期段階の方に現れることが多い症状です。 高齢者に多いうつ症状としては、現在患っている病気のことを過度に心配し、横になっている時間が増えて元気のない状況が続く、といったことが典型的な症状です。 こうした抑うつに対しては、 「幸せホルモン」とも呼ばれる「セロトニン」や、集中力と意欲を高める「ノルアドレナリン」の量を増やす効果があります。 抗うつ薬を服用するうえで注意しなければならないのが副作用です。 めまいやふらつき、吐き気、便秘、排尿障害、食欲不振などが報告されています。 また、糖尿病や高血圧の発症リスクとの関連性を示す研究もあり、服用にあたっては医師や薬剤師ときちんと相談していく必要があるでしょう。 下記では、行動・心理症状に対する効果的な抗うつ薬についてまとめています。 対象となる行動・心理症状 薬品名 注意点 主な副作用 抑うつ・前頭側頭型認知症の脱抑制(自分を抑えられない)・常同行動(同じことを繰り返す) フルボキサミン 1日3回、食後 ・セロトニン症候群(不安・興奮・身体の震えなど) ・幻覚、せん妄、錯乱 ・意識障害 パロキセチン 1日1回、夕食後 ・セロトニン症候群(不安・興奮・身体の震えなど) ・悪性症候群(硬直、体温上昇、頻脈など) ・幻覚、せん妄、錯乱 セルトラリン 1日1回、朝食後 ・セロトニン症候群(不安・興奮・身体の震えなど) ・悪性症候群(硬直、体温上昇、頻脈など) ・けいれん、昏睡 エスシタロプラム 1日1回、夕食後 ・セロトニン症候群(不安・興奮・身体の震えなど) ・不整脈 ・けいれん、昏睡 抑うつ・不安・眠気・食欲増進 ミルタザピン 1日1回、就寝前 ・セロトニン症候群(不安・興奮・身体の震えなど) ・重い血液成分の異常 ・けいれん、昏睡 不安・眠気・焦燥 ミアンセリン 1日1回、就寝前 ・悪性症候群(硬直、体温上昇、頻脈など) ・重い血液成分の異常 ・けいれん、昏睡 トラゾドン 1日1回、就寝前 ・悪性症候群(硬直、体温上昇、頻脈など) ・セロトニン症候群(不安・興奮・身体の震えなど) ・せん妄、錯乱 睡眠薬 認知症を発症すると、夜間不眠に陥り、その代わりに昼間に眠気が襲ってくるという「昼夜逆転」の症状を訴える人も少なくありません。 このような症状が出るようになると、何より介護する側の負担が大きくなります。 こうした症状に対して有効になるのが睡眠剤。 認知症の不眠症は脳の睡眠中枢が機能しなくなることから起こることも多く、その場合は適切な薬剤療法が必要となります。 ただ、睡眠導入剤には筋弛緩効果があるため、薬の管理は慎重に行う必要があります。 効果が強い場合は、翌朝になっても眠気が続く「持ち越し効果」が生じる場合もあるので、医師に処方された服用量をしっかりと守る必要があります。 主な睡眠薬の種類は、下記のとおりです。 薬品名 注意点 ゾルピデム 超短時間作用型・半減期2. 5時間 ゾピクロン 超短時間作用型・半減期3. 5-6. 5時間 エスゾピクロン 超短時間作用型・半減期5. この数値が短いと排泄や代謝によって血中からなくなるため、効果が早く切れやすい 漢方薬 神経が高ぶってイライラしたり、不安や妄想、暴力などの症状がみられたりするときに効果的なのが漢方薬です。 これまで認知症のBPSD(周辺症状)に対しては抗うつ薬や抗精神病薬、抗不安薬などが処方されてきましたが、これら西洋薬のなかにはすべての身体機能を鈍らせてしまうものもありました。 これに対し、 漢方薬には身体機能を維持したまま、症状だけを抑えていく効果が期待できます。 なかでも「抑肝散(よくかんさん)」という漢方薬は、認知症患者にみられがちな興奮状態に陥った神経を鎮め、怒りやイライラを改善し、心を穏やかにしてくれる効果があります。 ほかにも認知症に効く漢方薬はたくさんありますが、体質によって効果に差があるため、医師と相談しながら自分に合った最適な処方を見つけることが大切です。 認知症が進行すると、記憶力をはじめ理解力や判断力の低下も著しくなるため、服薬管理の問題がどうしても生じてきます。 ただ、ちょっと薬をうまく飲めないからといって、介護者が全面的に服薬管理をしていこうとするのは、必ずしも良いとは言えません。 本人がまだ「自分で管理できる」と考えているのに、介護者が無理に手伝おうとすると、自尊心を傷つけてしまいます。 残存能力をできるだけ尊重し、できない部分だけ支えていくことが、認知症の介護においては大事なことです。 しかし、いよいよ認知症が悪化し、明らかに服薬管理が難しい場合は、家族のサポートが必要になります。 また、訪問看護や居宅療養管理指導など服薬管理を行う介護保険サービスもあるので、もし利用したい場合は担当のケアマネジャーに相談してみましょう。 ご家族が同居している場合には、薬を渡す方も間違えないようにするために、「お薬カレンダー」や1週間・1ヵ月ごとなどで飲む薬をまとめられる「薬ケース」を活用するのがおすすめです。 また、一度に飲む薬が多くていつも何かを飲み忘れてしまう・・・という場合には、薬局などでお願いすると「一包化加算」と呼ばれる料金を支払うことで、1回分のお薬をひとつの袋にまとめてもらえます。 包みごとにいつ飲むのかを印字もしくは手書きしておけば、間違いも減りますよ。 もしも、認知症の人と離れて暮らしていたり、日中は薬を飲む場にいてあげられなかったりする場合にも、飲み忘れを防ぐ方法はいくつか考えられます。 例えば、訪問介護やデイサービスなど介護保険サービスを利用する時間帯なら、介護事業所にお願いするのもひとつの手。 不在時には、電話やメモ、アラームなどを使って、飲む時間を知らせるといいでしょう。 近年では、 時間になるとお知らせとともに正しい薬を出してくれる「服薬支援ロボット」なども登場しています。 こうしたツールは、機会があれば使ってみてもいいかもしれませんね。 飲み過ぎを防ぐために 認知症の人は記憶障害が起こっているので、既に薬を飲んだことを忘れてしまい、「まだ飲んでいない」と訴えることも少なくありません。 この場合、本人は「飲んでいない」ことを事実として受け止めているため、「もう飲んだよ」と言って説得することは効果がありません。 だからといって、追加で薬を飲ませることは副作用のリスクが生じるので厳禁。 この場合、 対策として考えられるのが「偽薬」の利用。 偽薬を飲んでもらうことで、本人は「きちんと薬を飲んだ」という安心感を得ることができます。 市販されている偽薬は、原料には還元麦芽糖などが用いられているので、飲んでも体には何の影響もありません。 服薬トラブルは介護施設でもしばしば起こっていましたが、偽薬を効果的に使うことで、問題はかなり解消されたと言われています。 本人が薬を飲むことを嫌がる場合や、うまく飲めない場合は、医師にお願いして飲みやすい形状に変えるのもひとつの方法です。 例えばそれまで錠剤だったものを、 ゼリー状や液状のものに変更すると、拒絶する気持ちが和らぐかもしれません。 ただ、こうした対処方法だけでなく、本人の気持ちに寄り添うことも大事です。 飲んでもらおうとした時は嫌がっても、後で気持ちが落ち着いた時に飲んでもらえることもあります。 その場合、時間をずらして飲める薬かどうか、事前に医師や薬剤師に確認しなければなりません。 また、薬の副作用や新しい病気によって服薬を拒否していることも考えられるので、「とにかく飲んでもらう」のではなく、医師に状況を報告し、指示を受ける必要もあるでしょう。 非薬物治療や入院治療という選択 認知症の治療に効果的なのは、薬物療法だけではありません。 薬を使用しない非薬物治療や入院治療が選択されることもあります。 非薬物治療では 認知機能のリハビリテーションや 生活リハビリテーションを中心におこない、家族や周囲との関わり方を改善することで行動・心理症状をやわらげていきます。 認知機能のリハビリテーションでは音楽療法や芸術療法、アロマテラピー、園芸療法などで脳の活性化や精神的な安定を図り、問題行動を抑えていきます。 また、計算ドリルや脳トレなどの学習療法も効果的だとされています。 入院治療の場合は医師によって薬の増減や副作用の有無をこまかくチェックしてもらえます。 また、合併症の治療が同時に行えることや、BPSD(周辺症状)を発症する環境から離れられることなどのメリットもあります。

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